タマゾン川のスプリングエフェメラル 2022.02.27
去年は風が強くペアが見れなかったのでリベンジをしにタマゾン川へ向かう。
スプリングエフェメラルとは「春の儚い命」と呼ばれ、年に一度春にだけ咲く植物のことを指します。僕ら虫屋は年に一度春にだけ現れ、逢える虫を総じて「スプリングエフェメラル(春の妖精)」と呼んでいます。
その中でもいち早く現れ、生息域が河川敷と限定(多分)されているフチグロトゲエダシャク(通称フッチー)という蛾に今日は会いに行って来ました。
45年ぶりと言われるほどの寒波だった今年の冬も、この週末でようやく気温が上がり始めてきた。それでも去年とは比べ物にならないほどの低気温。去年のフッチーの出現ピークだったと思われる2/21~2/22の最高気温はなんと22℃。5月上旬並だった。個体数もとても多かったけど、僕が伺った日はあいにくの強風。♂は乱舞しているのに風で煽られすぐに見失う。そして♀は探し出せずに終わった。今年はそのリベンジである。
場所は東京都国立市。我が家から車で45分ほど。去年初めて訪れた際はポイントと真逆の方向へ向ってしまい、2時間以上彷徨って到着した苦い思い出。しかし彷徨わなければ駐車場からポイントまで0秒である。
車から降りると隣の車のおじさん(僕もおじさんですが、更に上です)が明らかに同業の匂いを漂わせている。身なりから、カメラまで間違いなく狙いはフッチー。(フッチーでした)
先を行く次男がオオカマキリの卵鞘を見つけるものの、肝心のフッチーが全く飛んでいる気配すらない。
やはり今年は寒かったからまだ早いのか。。。
とかなり先で次男が「採ったよー!」と叫んでいる。
嘘でしょ。全く飛んでないぞ。また去年みたいにモンキチョウじゃないの?
と駆け寄って見ると
間違いなくフッチーでした。疑ってごめんなさい。
フッチーを探したことがある方ならわかっていただけると思うが、触角を入れなければ体長1.5cmほどでとても敏捷に飛ぶ。慣れないと目で追うのも難しい。
去年見ているとはいえ、そんなすんなり捕獲するとは、流石我が次男。
と次男の奥に目をやると、おじさまの手元に何やらまごまごしいものが。
フッチーの♀が大量に。。。(♀は翅が退化して無いので飛べません)
どうやらフェロモントラップをして♂を誘引していたご様子。しかも3名で各々羽化した♀を何十頭と用意していた。
これではこの周辺の♂はここにしか集まらないではないか!大問題である。
何が目的でこんな大量の♀を持って来たのかはわからずじまいだが、非常に困った。僕らが見たいのは自然化のペアで、やらせのペアではないのだ。
息子達に餌を与え、1人で目を凝らして飛んでいる♂の行方を追うが全く止まる気配がない。そして更に困ったことに風が強くなって来た。
フッチーはとても小さいので風が強くなると飛ばなくなる。
飛んだとしても煽られて♀の元へ着地出来ない。結局今日もペアは見つけられず。
しかし♂は10頭ほど見れたので、気象条件さえ良ければペアは見つけられそう。
帰宅し、モヤモヤしていた僕は1人で近所の谷戸へ。
谷戸の奥にある田んぼの脇の歩道に、常に湧き水が溢れてグショグショで歩けない所があるのだが、ただなんとなく「この石の下になんかいそう」という気になり、持ち上げてみると見慣れない虫が目に入った。
地元谷戸では毎年必ず目撃しているヤマトクロスジヘビトンボの幼虫だ。
探していたわけではないが、今日初めて幼虫を見ることが出来てフッチーのペアが見れなかったモヤモヤもどこかへ行ってしまった。ありがとうクロスジヘビトンボ。
ヘビトンボ類の幼虫は「孫太郎虫」と呼ばれ、民間薬として使われたり珍味として食べられて来たそうだ。とても美味しそうとは思えないが、幼虫も成虫も古代感が残っていてとても好きな昆虫だ。
東京都国立市
次回は「ガマ合戦」