tame insect diary(仮)

生物多様性とは何か?植物や虫を観察し、探求する親子の日常を綴る

地元緑地 秋の冬夜蛾 前編1109~1116

体調をここ1週間かなり壊していて(今も良くないけど)何もする気が起きず、普段観もしないドラマ(2017年放送の「カルテット」)を一気に観たり、久しぶりに自分のブログを2月から振り返っていたら、意外とちゃんと書いていて読み返すとこんなことあったなーと、書いていて良かったことがあり、書こう書こうと思って延びてしまった、11月の秋キリガ観察をだらだらと思い返しながら書いて行こうと思います。

この時期は「冬夜蛾(キリガ)」というよりも、地元のヒメヤママユに2年ぶりに会いたくて夜を徘徊していました。メインはそちらであり、あくまで冬夜蛾はデザート感覚。今日は(12/15)寒波がやって来ていて最低気温2℃、最高気温も10℃くらいですが、11/9は最高気温こそ18℃でしたが最低気温は12℃。夜間も今の最高気温くらいの暖かさです。

この日は地元の虫友蘭丸さんと待ち合わせて、西口のトイレからグルっと緑地を1周回ったにも関わらず、ヒメヤママユどころではなく、キリガのポイントもイマイチ把握出来ていなくて、出会えたのはキイロヒラタヒメバチとフサヤガくらいだったのを覚えています。

ウバメガシのどんぐりを探していたら、たまたま葉裏にいたキイロヒラタヒメバチ

ウバメガシのどんぐり。浅い帽子(殻斗)が可愛い。たった1つしか見つかりませんでした。

サザンカの花に来ていたフサヤガ。幾化学的な模様と色合いが素敵です。



続けて11/14。この日からちゃんとメモ帳にメモを取りながら観察し始めています。(最初からやってくれ)前日の夜に11月初の雨が降り、この日は曇り最高気温は18℃、最低気温は15℃と高め。それが蛾たちの羽化を促したのか、トイレの灯りにも多数の蛾がやって来ていました。

今年初認のニトベエダシャク。ビカビカの♂ですね。
この時はまだ知りませんでしたが、今年は大発生しました。

「ニトベ」と付く蛾は結構いますが、多分どれも新渡戸稲造さんの従兄弟にあたる新渡戸稲雄さんへの献命です。(リンゴの害虫を研究したそうです)

今期は3度ほどちょこちょこと目にしたツマジロエダシャク。
その名の通り端が白いのが特徴のエダシャクです。

 

この日は2頭いたウリキンウワバ。ウリ科の害虫です。綺麗なんですけどね~。

同定が難しいキンウワバもエゾギク、ウリキン、キクキンはわかるようになりました(笑)


ケンモンミドリキリガ。見事な苔擬態に金粉が美しいキリガです。

結局ケンモンミドリキリガには今シーズンこの日しか会うことが出来ませんでした。1年でチャンスがたった1回しか無いのも、また魅力の1つなのかも知れませんね。

そして今シーズン最も興奮した出会いがこの後起きたんです。
「ケンポナシ」という樹をご存じでしょうか?聞き慣れない樹木ですよね。僕もとある方のブログで初めてその存在を知り、果実がとても面白い形をしていて更に食べられるという事を知りました。地元の県立公園にはその樹があるという情報だけ知っていて、実際見たことがなく、この時期になるとその特徴的な果実を目印に探していました。しかし全く見つけることが出来ず諦めていたのですが、なんとこの夜周りをしている時にその果実が沢山落ちている場所をこの緑地内で見つけたのです。

こちらがそのケンポナシの果実。
白いのが種子で細長く伸びている赤褐色の部分が果実です。


果実をパキッと折ってみるとまさに梨の香りがします。実際舐めてみましたが甘いです。しかし見つけた時はまさかこの果実に蛾が吸蜜しに来るとは想像もしませんでした。このケンポナシの実が落ちている先にサザンカの花が咲いているポイントがあるのですが、そこへ向かう最中ふと振り返ると、シロダモに引っかかっているケンポナシの実に何かがくっ付いていることに気が付きました。(夜蛾は総じて複眼がライトの光を反射するのでそれで気づく事が僕は多いです)

ケンポナシの実に鎮座していたアケビコノハ

羽化したばかりと思われる美しい個体のアケビコノハに圧倒されてしまいました。藪の中でしたが、もうわけもわからないまま横たわり、前から後ろから撮らせてもらいました。

この迫力。太い口吻に発達したパルピ。


この実にはかなり魔力があるようで、この後2時間ほど散策して戻って来ても、まだ同じ所で吸っていました。

ゴンズイの枝にいたキバラモクメキリガ。見事な枝擬態のキリガです。


このゴンズイの樹にはムクゲコノハもいたのですが、遠くて撮れず、一度網に入れようとしましたがあえなくロスト。あとで伺ったのですが、どうやらゴンズイに沢山付いているゴンズイノフクレアブラムシというアブラムシから出る蜜を吸いに来ていたのかもしれません。

もう1つのトイレの壁に止まっていた今シーズン初のキシダモンキリガ。

少し前までは「ヤマノモンキリガ」という和名だったようですが、蛾類学会の岸田泰則さんが発見した種のようで、最近になり和名が変更されたそうです。
類似種にスギタニモンキリガがいます。
このトイレ脇のイロハモミジの葉裏でノコメトガリキリガ、キバラモクメキリガ。アワブキの葉裏でヒメノコメエダシャクを見た後帰り道で

ヒサカキの葉に止まっていたウスキツバメエダシャク。

普段良く見かけるウスキツバメエダシャクですが、11月はこの1回のみの出会いでした。普通種ですがとても美しいエダシャクだと思います。こういう種は疎かになりがちで、幼虫もちゃんと同定出来ませんし、奇主植物もちゃんと理解していないのでダメだなぁと自分への戒めになります。

前編ラストになる11/16。この日から最低気温が10℃を下回り始め、ウスタビガが出始めないかなぁとひたすらルッキングしながら夜歩き回っていました。
まず恒例のトイレにいた初見の蛾から。

翅の形がとても格好良い小さなミナミクロホシフタオ。

クロホシフタオかな?と思ったのですが、イモムシ先生に南方種で最近北上しているミナミクロホシフタオの方ですよと教えて頂きました。

実は初見のエゾギクキンウワバ。白い筋が特徴です。

この日のケンポナシにはハガタクチバがいましたが、高かったのと場所が悪かったので撮るのを断念。コロギスの幼虫も見かけました。(食べにきてたのかな?)

峠のウバメガシの垣根にオオキノメイガ。
ノメイガの中では最大クラスではないでしょうか?

 

サザンカの垣根をしゃがみながらジロジロ。
やっと見つけたのはキリガではなくヒメクビグロクチバ。

ヒサカキの葉裏に初見のカシワキボシキリガ。
この時期見られるキリガの中では唯一無二のカラーリング。

お山のソメイヨシノの枝先に何か違和感を感じ近寄ると、フユシャク!?と思い撮ってみたらまさかの…

羽化不全と思われる♀と交尾していたニトベエダシャクでした。


この後見られるキリガに比べるとまだまだ物足りない内容なのですが、見返すと色々見たなーという印象です。
後編へ続く

神奈川県川崎市i