真夏以上の暑さが1週間続いたと思ったら、今度は梅雨が戻って来たかのような長雨が降ったり止んだりしていますが、着実に季節は夏に進み、朝早くから蝉の合唱が聞こえてくるようになりました。
今年我が家ではクツワムシを卵から育てています。
孵化(5/19)してから今日まで(まだ続きますが)2日に1度エサ用に「クズ(葛)」という植物の葉を採りに行っています。
日本ではとても身近な植物で、どんな所でも見かけることが出来且つ、その根を葛粉として利用されていますが、一度根付いてしまうと駆除が困難な事から侵略的外来種として海外では恐れられているようです。
ある時(5/31)、エサ用として採りに行っていたクズに見慣れぬ虫が付いていることに気が付きました。
触れると「ピョーーーーンッ!!」と飛び跳ねます。僕はこの不思議な虫を育ててみることにしました。と言っても、クツワムシと一緒にクズの葉を与えるだけですが(^▽^;)
まるでバレリーナのような出で立ちですが、この飾り毛、触れるとすぐにホロっと取れてしまいます。
何のためにあるのかは想像でしかありませんが、捕食者に狙われた際、身代わりに外すのかな?と思いました。
そして1ヶ月が経った頃、クツワムシの後脚に何かがしがみ付いていました。
ベッコウハゴロモ Ricania japonica
カメムシ目 ヨコバイ亜目 ハゴロモ上科 ハゴロモ科
卵越冬。幼虫の孵化は翌年5月中旬。成虫は7月から8月に出現。
同じ亜目に属するセミに生態がとても似ています。サイクルは1年なのか気になる所です。
アオバハゴロモやアミガサハゴロモは見たことがありましたが、こんな身近なクズにハゴロモがつくことも、幼虫の姿があんな派手な出で立ちなことも恥ずかしながら知りませんでした。
今、僕が採りに行っているクズの群落にはこのベッコウハゴロモを始め、様々な昆虫が生息しています。時には楽園でもあり、時には戦場でもあるそれぞれのドラマが繰り広げられています。
そこへ昨夜ほんの少しだけお邪魔して来たので、群落の中を一緒に覗いてみましょう。
幼虫時の体の模様の名残が翅に出ている様に感じますね。
複眼は個体差もありますが、赤褐色に黒線の縞模様です。
雌雄差は交尾器以外だと翅色にもありそうだなと思いましたが、個体差なのかもしれません。要観察ですね。それにしてもセミそっくり!
ベッコウハゴロモの腹部に白い塊が見えます。
これは「ハゴロモヤドリガ」という蛾の幼虫です。寄生バチや寄生バエのように他種の昆虫に寄生する蛾も存在するのです。有名な所だとセミヤドリガですが、僕はまだ会えたことがありません。
このテントウムシは最近物凄く増えて来ている外来のテントウムシで、先ほどのマルカメムシの幼虫を捕食して育つそうです。
そうです。人から忌み嫌われているマルカメムシたちも実は今、外来種に強襲され大ピンチの窮地なのです。
幼虫ながらその匂いはしっかりとカメムシらしい匂いを放ちます。
30分ほどの観察でしたが、クズの群落では様々な種の昆虫たちが、それぞれの一生を逞しく生き抜いていく一瞬を垣間見ることが出来ました。
住宅地の片隅でひっそりと行われている昆虫ドラマ。僕たちにとっては夏の夜の夢のような儚い出来事ですが、彼らにとっては長い長い夏の一生の出来事なのかもしれません。
神奈川県川崎市