tame insect diary(仮)

生物多様性とは何か?植物や虫を観察し、探求する親子の日常を綴る

春の三大蛾 2022.03.25

春の三大蛾の二種、イボタガとエゾヨツメがそろそろ出始めていそうな気がしたので、自分に鞭を打ちお山へ向かいました。

現地に到着したのは22:30。日が落ちる頃に活動するエゾヨツメの時間には遅すぎるため、狙いはイボタガに。2年前にライトを焚き、実績がある周辺のイボタノキ周りを探すも見つかる気配はありません。ヘッドライトの明かりで動きがあるのはハスオビエダシャクやキリガのみ。頼みのトイレもカギモンヤガとカバキリガ。

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キブシを吸いたいカギモンヤガと



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あったかいコーヒーが飲みたいカギモンヤガ

カギモンヤガ Cerastis pallescens
(鍵紋夜蛾) チョウ目ヤガ上科ヤガ科モンヤガ亜科

食草はウラシマソウ、アマドコロとある。出現期は3~4月。蛹で越冬。情報が少ないヤガである。


お山の花はキブシが花盛り。見たことないほどのキリガたちが吸蜜に訪れていましたが、あいにく殆どの花穂が高く、中々僕のファインダーに納まる蛾が見つかりません。それでもハスオビエダシャクの個体数は恐ろしいほどで右を向いても、左を向いても、上を向いても次から次へと飛んできます。

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キブシを吸蜜するハスオビエダシャク

ハスオビエダシャク Descoreba simplex
(斜帯枝尺蠖)チョウ目シャクガ上科シャクガ科エダシャク亜科
「斜帯」とは兵士が肩から腰にかけていた帯のこと。「尺蠖」はシャクトリムシを指す言葉。年に一度この時期にしか見られないエダシャク科の蛾。食草はとても幅が広く、様々な広葉樹を食べる。年一化の虫だが、個体数が多いのも納得。

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初めましてのクロミミキリガ

クロミミキリガ Orthosia lizetta
(黒耳切蛾)チョウ目ヤガ上科ヤガ科ヨトウガ亜科
この手のキリガは擦れていると同定がかなり困難な種だ。ブナキリガ、クロテンキリガ、ホソバキリガなど変異が多く似ている種が多い。個体の大きさである程度絞れるが、この写真のようにビカビカの綺麗な個体で特徴的な斑紋が見てとれると、キリガ初心者の僕でもクロミミキリガだなと同定出来るが中々そうはいかない。食草は広食性。年一化の春キリガ。

夜の散策は昼間の散策に比べメリットがいくつかあります。
その1つに樹木の葉を下から照らすと、昼間は擬態して見つかりにくい虫が見つかります。この日もアラカシの葉を照らすとヤママユの繭がいくつか見つかりました。この数なら枝に卵が見つかるかも。と探していると大きめのカミキリムシが目に飛び込んで来ました。こんな時期にこんな大きいカミキリムシがもういるんだ。と驚いて良く見ると更にビックリ。
冬が来るたびに探していた成虫で越冬するタテジマカミキリでした。二度見を通り越して三度見ほどしましたが、何回見てもアラカシです。カクレミノちゃうんかい!と心の中で叫びましたが、そんなことはもうどうでもよく、撮影会。

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アラカシを削り、身を潜めていたタテジマカミキリ

タテジマカミキリ(縦縞天牛)
Aulaconotus pachypezoides

コウチュウ目ハムシ上科カミキリムシ科フトカミキリ亜科
成虫で越冬する数少ないカミキリムシ。
成虫はカクレミノやヤマウコギの樹皮や葉を後食し、幼虫もそれらの木の中で成長する。越冬した成虫は春に交尾し産卵。新成虫は夏に羽化。

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「私は枝ですよ」と言わんばかりの抱きつき様

本来であればカクレミノの枝を齧って、そこに出来た窪みで越冬するはずのタテジマカミキリがなぜ堅そうなアラカシをセレクトしたのでしょう。ベテランのカミキリ屋さんもアラカシでは見たことがないそうです。おっちょこちょいのレアケースかもしれません。
結局目的のイボタガとエゾヨツメには出会えずじまいでしたが、タテジマカミキリとの出会いの感動で満たされました。
次回は高尾でリベンジしましょう。

神奈川県秦野市